2026.08.26

MOBILE STARS SUMMER 2026

今回は、2026年8月に開催されたアプリマーケター向けコミュニティイベント「MOBILE STARS SUMMER 2026」のレポートをお届けします。

MOBILE STARSは、アプリマーケティングに携わるマーケターが集い、現場で得た知見や経験を共有し合うコミュニティです。変化のスピードが速いアプリ業界において、実務者同士がリアルなナレッジを交換し、それぞれの現場に持ち帰れる学びを得られる場として活動を続けています。

「MOBILE STARS SUMMER 2026」は、Adjust、Braze、Moloco、Moonplateの4社が主催。会場提供とネットワーキングは株式会社ヤプリのスポンサードによって行われ、六本木・住友不動産六本木グランドタワー41階の会場には、多くのアプリマーケターが集まりました。

「答えは星の数ほどある」——MOBILE STARSが大切にしていること

冒頭に立ったのは、運営代表を務める大西さん。MOBILE STARSにはかつて運営されていた「モバイルヒーロー」が前身としてあり、大西さん自身も当時はいち参加者でした。「『他の会社ではどう考えているんだろう』と相談すると、『うちではこうしていますよ』『実は僕も同じように悩んでいました』と返ってくる。そうやって何度も助けられてきたんです」。

大西さんが大切にしている言葉が、「答えは星の数ほどある」。「会社が違えば経験も違う。立場や経験が違えば、見えている景色も違います。だからこそ、ひとりで答えを探すのではなく、いろんな方から答えを教えてもらったらいい」。そんな呼びかけから、この日のイベントは始まりました。

リーバイスが目指すプレミアムな顧客体験 〜アプリの現在地とその先へ〜【リーバイ・ストラウス ジャパン株式会社】

最初に登壇いただいたのは、リーバイ・ストラウス ジャパン株式会社でイーコマース マネージャーを務める佐竹良介さん。MCはBraze株式会社の佐藤洋介さんです。佐竹さんはEC畑一筋15年ほど。リーバイスでは2018年に公式アプリを立ち上げて以来8年、2021年からはマネージャーを務めています。

アメリカでの創業から170年余りのグローバル企業ですが、日本のEC組織は少人数。アジアのハブであるシンガポールと連携しながら運営しています。

リーバイスのEC売上は、この10年で大きく伸びてきました。モール中心だった売上を自社ECへ移していくうえで、欠かせない存在と位置づけたのがアプリです。「当時はまだ国内でも事例が多くない時期でしたが、関係部署の協力をもらいながら日本が先行して導入しました」

転機になったのは、オンラインとオフラインの会員統合です。別々だった会員基盤が一つになったことで、誰が何を買っているのかが初めて一本の線でつながり、本格的な顧客分析が可能になりました。そこで見えてきたのが、既存顧客の購入回数にまだ伸びしろがあるという事実です。「CRM施策も一斉配信もやっていた。でも分母を広げることに寄っていて、既存のお客様との関係づくりはこれからだと感じました」

そこから取り組んだのが、購買データを起点とした顧客グループの分類です。特徴的なのは、年齢や性別といった属性よりも「何を買っているか」を軸に据えている点。「面白かったのは、特定のカスタマーグループが交わらないと分かったこと。ということは、特定層には特定層だけのコミュニケーションを設計すればいいわけです」。グループはあらかじめ設計しておき、LTVの高い層が厚くなるようポートフォリオをリバランスしていく、という考え方です。

配信するコンテンツも出し分けています。スタッフのコーディネート画像はライト層に、動画はアッパー層に。この判断の裏側にも、定性調査での発見がありました。「ヴィンテージクロージングを選ばれる方は、情報の入り口が驚くほど共通していたんです。インタビューで確かめたら、本当に全員が同じチャネルを見ていました」

印象的だったのは、アプリの捉え方です。アプリは「配る場所」ではなく「通う場所」。ロイヤリティの高いお客様ほど、冷蔵庫を開けるような感覚でアプリを開くといいます。だからこそ、メール→LINE→アプリの順に関係を引き上げていくチャネル設計が基本になる。インストール経路で最も効いたのは店舗のQRコードで、設置場所を検証したところ、いちばん反応が良かったのは試着室の鏡でした。

学びも率直に語られました。初期はインストール数を指標に置いていたため、数が増えるほど一人ひとりとの関係づくりが追いつかなくなったといいます。「DL数をKPIに置くと、また違う話になってしまうんですよね」

そして今、佐竹さんが注目しているのがオフラインの来場者です。ポップアップやイベント、たとえば大阪で開催したレディース向けイベントもその一つ。会場のQRコードからインストールを促し、店舗体験のなかで会員登録につなげ、後日マルチチャネルで関係を重ねていく。「イベントで出会えたお客様と、その後どう関係を続けていくか。そこが次のテーマです」

Duolingoはなぜ毎日開きたくなるのか? 〜世界No.1アプリのグロース戦略〜【Duolingo, Inc.】

続くセッションは、Duolingo, Inc. 日本カントリーマネージャーの水谷翔さん。MCは大西さんが務めました。「Duolingoを知っているという方?」という問いかけに、会場のほとんどの手が挙がります。「僕が入ったのが2020年で、当時の認知は全国で5%もいっていませんでした」。2024年からは韓国市場も兼任。「2020年から2024年まではずっとひとりでやっていて、今やっと4人です」。

Duolingoが最も大切にしているのは「楽しい」こと。創業者でCEOのルイスさんとCTOのセブリンさんは、お互いの母語のコースを作って学び合うことから始めましたが、3日後に進捗を聞き合うと——二人とも「退屈で続かないからやめた」。「言語学習の最大のハードルはモチベーションの継続だと。だから楽しくしました、というのが本当に原点なんです」。そうして生まれたのが、いまや1.2億人が使う世界一の教育アプリです。

その成長を支えているのが、「コンパウンドグロース」と呼ばれる複利の考え方。DAU10万人、口コミで日に2万人が流入し同じ数だけ離脱する状態なら、リテンションレートを1ポイント改善するだけで8日後にはDAUが8000人以上増える計算になります。さらに強調されたのが、意思決定のスピードでした。同じ新機能でも、完成度を上げるためにテストを2回挟むと実装は約2ヶ月遅れ——それだけでDAUに2倍の差がつくといいます。「効果の高い施策は、早く実行すればするほど成長への影響も早まる。そしてその改善は、複利のように積み重なっていきます」。

それを可能にしているのが、ABテストを高速に回せる環境です。四半期ごとに何百という実験が立ち上がり、誰でも実行・分析できるツールが整っている。アプリ内で見かける機能はほぼすべてABテストを経ており、あのプッシュ通知も例外ではありません。「デュオがメンヘラだとよく言われるんですけど、あれもABテストの結晶だと思っていただければ(笑)」。

スピードと質の両立を支えるのは、先に決めたルール。「リテンションレートが最も大事。売上が上がってもリテンションが下がる実験はドロップします」。加えて、上場企業となった今も、UIや仕様の変更はCEOのルイスさんのレビューを通らないと世に出ないそうです。「プロダクトレビューは15分。その間に3回くらいピッチの機会があるんです」。

ここからは日本編。市場参入時に最初にやったのは、マーケットのギャップを探す調査でした。語学学習はレッドオーシャンに見えるけれど、多くのプレイヤーは「すでに勉強を頑張っている真面目な層」を狙っている。一方、当時のデータでは「関心はあるがまだ学習していない」層が7000万人——人口の55%がぽっかり空いていました。「他社がここを狙わないのは、お金を払わないだろうから。でも、ゲームのように学べるDuolingoなら、唯一ここを狙えるんじゃないかと」。認知度4.9%からのスタートでしたが、その仮説は当たり、1年半ほどでペネトレーションはトップに立ちました。

残る課題は、コンセプトをどう正しく伝えるか。ヒントは、数多く重ねたユーザーインタビューの中にありました。ある20代の男性ユーザーが、2年間、毎日お風呂でDuolingoを続けていた。その場では聞き流したものの、後から引っかかったといいます。「脳に負荷がかかるはずの英語学習を、リラックスしたいお風呂でなぜやるんだろう、と」。

電話をかけ直して聞いてみると、返ってきた答えは——「インスタがDuolingoに置き換わった感じですかね」。

「そこで初めて、これまでのインタビューがピーッと繋がったんです。勉強の手段よりリラックスタイムのエンタメに近い。ユーザーが価値を感じているのは『ぼーっとしながら外国語が学べる』ことなんだと」。

そこから逆算して定まったインサイトが、「英語は喋れるようになりたいけど、勉強はしたくない」。生まれたのが、あの「ゴロゴロ」CMです。クリエイターへのブリーフはたった2行、「ゴロゴロしながら英語が学べるアプリだと伝えること」「デュオリンゴという名前を覚えてもらうこと」。「自分が最初に見たとき笑っちゃったんですよ。笑っちゃうということは面白いということなので、いいクリエイティブができたなと」。

質疑では、日本ユーザーの特徴にも話が及びました。かつて「プレイスメントテスト」という名称だったレベル診断は、日本だけ受講率が低かったそう。「『テスト』という響きが怖い、試されている感じが嫌だ、と。そこで名前を『クイズ』に変えたら、一気に受講率が跳ね上がりました」。

最後に紹介されたのが、連続学習記録「ストリーク」の話。世界で最も長い記録を持っているのは、日本のユーザーなのだそうです。「2位がドイツなので、これは本当に国民性が表れているなと思います」。

会場を移してのネットワーキング——「横のつながり」が生まれる時間

セッション終了後は、LINE公式アカウントの友だち追加と集合写真を挟んで、ネットワーキングへ。会場をスポンサードいただいた株式会社ヤプリのオフィスには特別に用意されたお食事とドリンクが並び、登壇者を囲む輪が自然といくつも生まれました。

「最近のアプリマーケ、どんなことやってる?」という会話があちこちから聞こえ、惜しみなくTipsが共有されていきます。

今回はDuolingoからゲストが来たということで、「Duolingoのフレンドなりましょうよ!」なんて会話も。冒頭で大西さんが語った「答えは星の数ほどある」という言葉が、そのまま形になった時間でした。

MOBILE STARSは、参加者を募集しています!

MOBILE STARSは、アプリマーケティングに携わるマーケターが集うコミュニティです。本イベントのように、第一線で活躍する登壇者によるセッションと、参加者同士のネットワーキングを通じて、明日からの実務に活かせる学びと新しいつながりを得られる場を、定期的に開催しています。

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